この記事へのコメント
これはまた、韻律も内容も、ある意味八方破れの破天荒な歌ですね。
が、決してやっつけ仕事ではなく、けっこう周到に組み立てられたなかなかの意欲作と見ました。

まず、詠まれている事象の逐語的な意味がよく分からないという人が、けっこう少なくないのではないかと思われます。そこで、お節介にもわたくしめが解説を試みようと思います。
・・・とはいうものの、私にとってもヒヤヒヤもので、一杯一杯ですが。

これは、携帯電話にまつわる歌です。

この作者(作中主体)は、ケータイの多くのアプリケーション・ソフト(機能)の一つで、とりわけ人気のある「ミクシィ」という簡易な会員制ネット社交サービス(ソーシャル・ネットワーキング・サービス、SNS)を利用している。
しかも、本文から推せば、日常的に愛用しており、平たくいえば、「相当ハマっている」。

その画面には大抵、「キャラクター」と呼ばれる、“人格”を持っているが実在しない可愛い架空の生物(のようなもの)が登場する。括弧付きで「棲息している」といってもいいであろう。
少々いにしえの例でいえば、いわば「たまごっち」のようなものといって大過ないだろう。

そのキャラクターに向かって、作中主体は「かあちやんが稼いでくるからな」とおどけてみせる。
もうこの上の句だけで、ある種のいじましさとペーソス(悲哀)が、ジュンジュワ〜っと津波のように押し寄せてくる。

そして結句は、一字空けで「うなされて」。
これは悪夢の中の出来事だったと明かされる、一種の重層的な構成ともいえる。

論理的にはなんともワケが分かりづらいが、直観的には、この大リストラ時代に喘ぐ、ストレス満載で追いつめられた作者の精神状況が顕わになる、心象風景であるといっていいだろう。

「かあちやん」というからには女性なのであろうし、ミクシィにハマっているのは若い世代なのであろう。多分、独身女性なのであろう。
・・・いや、作者探しは禁止事項です(笑)

この女性に幸多かれと祈らずにはいられない、今風の調べの魂の叫び。
Posted by 坂本野原 at 2010年07月06日 12:55
↑ 上の私のコメントで、若干の誤りや舌足らずな表現がありましたので、訂正します。

1)「ミクシィのキャラクター」には、いわゆる「非実在青少年」(「アニメのキャラ」のようなもの)を含みます。このイメージによっては、歌の解釈にも影響します。

2)「ミクシィ」は、×「ケータイのアプリケーション・ソフト(拡張機能)」ではなく、○「ケータイやiPadなどのモバイル(移動通信)でアクセス(接続)できる、相互交流目的の人気ウェブサイトの一種(ソーシャル・ネットワーキング・サービス・SNS)」が、おおむね正しい説明でありましょう。

この二つは、厳密に言えば全く似て非なるもので、明らかな間違いでした。インターネットに詳しい方には笑われてしまいそうですね。

ただ、この点は歌の解釈にはあんまり関係ないと思いますが、ともあれ、何とぞご容赦下さいませ。

インターネット用語って本当に難しいですね。

・・・では、皆さま夏風邪など召されませんよう。
Posted by 坂本野原 at 2010年07月08日 09:58
ミクシー、坂本野原さんがすでに解説しておられますが、わたくしは若くもありませんがはまっております。
ただ、「キャラクター」が良くわかりません。最初、アプリというゲームの中に出てくるものかと思いましたけれど、そのあたり自信がありません。

>かあちやんが稼いでくるからなミクシイのキヤラクターに言ふ うなされて

職場その他では、様々な人間関係の中で生きてはいても、個人的な関係はけっこう希薄だったりすることもある訳で、ネットの中でさらに実在しない「キャラクター」に話しかける。
本人はさほど違和を感じていないのかもしれませんけれど、わたし自身も割合普通のこととしてミクシー内の知人とおしゃべりしたり、ゲームをしたりしていますけれど、こう言うことをしない人にとっては普通じゃないことなのかもしれません。

で、作者は「キャラクター」に向かって「かあちやんが稼いでくるからな」といって、仕事に出かける。しかも、「うなされながら」であるので、やはり作者のうちにも、或種違和感があるのでしょう。
即ネット社会批判とかそういうことではなく、漠然と感じてゐる違和感のようなものです。

破調については、無理なく読めました。
不思議なリズムがあります。
一字あけも、これがないと意味がとりづらくなるので、あったほうがよさそうです。
Posted by 弘井文子 at 2010年07月08日 17:02
ミクシィはやりませんので、私も確信は持てませんが、作者の方は、たぶんこんな風なのを言っているのでしょうか?
http://www.4gamer.net/games/105/G010553/20100222021/

また、「ミクシィ キャラクター」で画像検索をかければ厖大に出てきますので、正確にはよく分かりませんね〜。

例えば、
http://mixi.co.jp/press/2008/0722/826
Posted by 坂本野原 at 2010年07月09日 11:47
短歌人公式ホームページの「利用規約」というところに、以下のように書かれています。

----------------

短歌人会では、各会員および同人が個人の運営するウェブサイト・掲示板あるいは短歌人会員・同人同士によるmyspace・mixi・frepa・GREEなどのSNS等での活動について、「短歌人」もしくは短歌人会の名称を使用することに関しましては一切の制限を設けておりません。

----------------

じつは、この記述は、当時短歌人のホームページを管理していた私が書き残した文章そのままです。当時、誰でも参加できるmyspaceのほうが私は好きだったのですが、誰かの紹介で参加できる、という、日本ふうなムラ社会システムのmixiが、圧倒的にシェアを占めました。

毛嫌いしながら、いかにもムラ社会ふうに私もmixiを使っています。

http://mixi.jp/show_profile.pl?id=7784351&from=navi

です。笑ってみてください。

さて、この作品の「キャラクター」というのは、たとえば萌え系のフィギュアなどではなく、mixiで公開している自分自身だと思います。「mixi上の私」ですね。
くどい書き方ですが、mixiというのはムラ社会です。しかし、本当の自分とはかすかに違う。「フリ」ができる。その「フリ」をした「mixi上の私」に対して「うなされながら、かあちゃんがかせいでくるからな」と言って仕事に向かうわけだから、「フリ」というより現実的な「嘘」がある。

このように読んで、作品が暗く辛いかといえば、そうでもないと思います。
ヒトという動物はいつも「フリ」をして生き延びてきた。その「フリ」が「mixi上の私」としてビジュアルになっただけだと思います。
Posted by 西王 燦  at 2010年07月09日 19:52
26. かあちやんが稼いでくるからなミクシイのキヤラクターに言ふ うなされて

「うなされて」という夢オチが、とても残念に思いました。
実際にこんなふうにパソコンに呼びかけて出社するという歌だったら
ユーモアがあっておもしろい歌になったんじゃないでしょうか。

「ミクシイ」の正式表記は「ミクシィ」ですね。
こういうところに注意を払うのが短歌では結構大事です。
「キャラクター」も「キヤラクター」としているので何か特別な意図があったのでしょうか?
 
Posted by 伊波虎英 at 2010年07月13日 17:47
ミクシィはしていますが、たんなる連絡用ほどにしか使っていないので、なんともなのですが、ミクシィ内の「サンシャイン牧場」などのアプリのことを言っているのかと思いました。(といいつつ、私はサンシャイン牧場もしてないのでわからないのですが)アプリは結構時間がかかるように聞いているのでほとんど手を出していませんが、なにかハマるとかなりの時間を費やすとか。それで「うなされて」、でも、稼がなきゃ、みたいなところをうまく表現されているのだろうなぁと(でも、サンシャイン牧場をされていそうな方からもそのようなコメントがないので、見当違いなのかもしれません)。

で、つい思い出したのが宇田川寛之さんの、

>サンシャイン牧場へゆき収穫のよろこびを吾(あ)は知りそめにけり

でした。

伊波さんがおっしゃっているのは旧かななのできっと片仮名も全部それにならわれたのでしょうね。でも、片仮名(外来語)は小さいままでいいと思っていますがどうなのでしょう。

先日、関西歌会でもあったのですが、「ツイッターでなう。」という言葉にたいして、その歌が旧かな遣いだったこともあり、ツイッターを知らない方からは「〜でのう(語りかけ)」の旧かな遣いだと思ったとのコメントが多々(苦笑・・・)あり、ネット歌会だったらもっと理解されただろうに、との話だったのですが、そうとも言えないのかもしれません(自戒込め再苦笑)。
Posted by 勺 禰子(しゃく ねこ) at 2010年07月14日 00:03

26. かあちやんが稼いでくるからなミクシイのキヤラクターに言ふ うなされて

伊波さんのコメント

>「うなされて」という夢オチが、とても残念に思いました。

このコメントに圧倒的に共感してしまいました。鋭い指摘です。

しかし、というか、なんとなく作者の弁明みたいですが、「うなされる」のは夢にうなされるのではなく、先に書きました「フリ」=「嘘」にうなされるのだ、と読まないと、この作品は面白くないですね。

さて、「ミクシイ」という表記について、話題が作品と逸れそうですが、ごめん。

促音の表記について、以下のような記事がありました。

http://oshiete.goo.ne.jp/qa/2482755.html

 手元に昭和26年のサンデー毎日と昭和30年の文藝春秋があります。サンデー毎日では三分の二くらいが新かなで、促音は小文字です、残り三分の一くらいは旧かな、促音はもちろん普通の大きさです。文藝春秋の方も、三分の二くらいが新仮名遣い、三分の一くらいが旧仮名遣いなのですが、驚くべきことに、新かなの文章でも、促音は普通の大きさで書かれています。
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たしかにこの記事は私たちにとって驚くところです。

あらためて「仮名遣い」や表記は獲得形質だと思うところ。遺伝子ではない。

「短歌人」では、「新仮名」の場合は、促音は小文字、「旧仮名」の場合は促音も大文字、というのが明文化されてはいないが、基本的なルールになっていると思います。
しかし、私は個人的には、旧仮名の場合も促音は小文字という獲得形質を持っています。原稿に「新旧まちまち」と書いて依田仁美先輩に強く叱られたり、
今でも、作品の内容によっては「促音は小文字でお願い」と書いて、顰蹙を買っています。

このこと、編集サイドを困らせない程度で、みんなで考えても面白い。

なお、勺さんが例示している、「ツイッターでなう。」というのは、「ツゥイッタァでなう。」であるべし。ここまですれば話題は膨らむ。

Posted by 西王 燦 at 2010年07月17日 20:22
西王さんお書きの促音の表記については
僕も旧仮名遣いを採用しているので悩ましいところです。
どうしても小文字で表記したい場合、
「あッといふまに」「ふッと」というように、
カタカナで小文字表記するようにしています。
 
Posted by 伊波虎英 at 2010年07月18日 17:36
旧かなは悩みの種です。それで学校生活を送った人はだんだん少なくなってますが、ギョエテ(ゲーテのこと)、など、外来語や、新しい言葉はどう表していいのか、私は大きく書きますが、悩ましいところです。

ほとんど朦朧状態で、mixiの店員に体力回復の食べ物を与えます。ほかの人のゴミ拾いをして、点数を稼いでくるので出稼ぎです。

本当の出稼ぎはそんな生易しいことではないですが、朦朧としていても店員の食い物を調達しに行くのはなんだか悪夢です。

あんた、あれはコンピュータだからほっとけば?それができないのです。
Posted by ふゆのゆふ at 2010年07月26日 02:55
旧かなで表現されて、違和感なく詠めました。
その時々で、考えていますが、いけないのでしょうか。

一字あけの最後の「うなされて」が、妙に 効果をあげ、
この歌のバーチャルな世界を現実にすとんと着地させ今の世相を表している。

急に歌会が始まっていて、遅くなりましたが、作者の意見も聞けて 勉強になりました。  
Posted by 西五辻 芳子 at 2010年07月27日 12:15

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