2010年10月22日

第3回ネット歌会詠草/1

最近トイレットペーパーを持ち帰る方がいらつしやるやうですがやめて下さい とトイレに
posted by 短歌人会 at 00:40| Comment(13) | 第3回歌会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 短歌のリズム(緩急緩急急)で読むのが難しい歌です。
 引用部分も長すぎて、ほとんど引用だけになっています。意味的には「トイレットペーパーを持ち帰るのはやめてください」くらいに縮められるとおもいます。
 僕は、基本的には、カタカナと引用部分は「新かな」で書くようにしています。が、人によると思います。そもそも、旧かなの場合は、旧かなと新漢字で書くこと自体が不自然といえば、不自然なのですが。
 でも、こんな些細なことを短歌にしようとする姿勢には、同感します。
Posted by 山寺修象 at 2010年10月22日 09:10
社会批評、というほどでもありませんが、滑稽味があって、理屈抜きに面白い歌だと思いました。

店の外にトイレがあるスーパーなどで、確かにこういう趣旨の張り紙を見たことがあります。そのデジャヴ(既知)感が「あるある」といった笑いと共感を誘います。

「とトイレに」を取っ払って、全部引用になってもいいと思います。
韻律を意識すれば、「最近」も要らないかも知れません。
Posted by 坂本野原 at 2010年10月22日 09:59
西王です。

最近トイレットペーパーを持ち帰る方がいらつしやるやうですがやめて下さい とトイレに

この作品についてのコメントを面白く読みました。それぞれ納得いたします。

私は、さて、このトイレはどこにあるのだろう、と考えてみました。「最近トイレットペーパーを持ち帰る方がいらつしやるやうですがやめて下さい」という部分をあきらかな引用として見做すと、この注意書きの書き手は、戦争を跨いで教育を受けた老人ではないか。たぶん75歳くらい。こういう世代なら、「最近〜」というような唐突な書き方も、「やうですが」というヘンな旧仮名遣いも理解できそうです。
スーパーやホームセンターの戸外にあるトイレの注意書きではなく、「道の駅」になれなかったような野中の観光トイレではないか。そのトイレをボランティアで清掃している老人の注意書きではないか、と思う次第です。
いかがでしょう。 
Posted by 西王 燦 at 2010年10月26日 09:17
西王さんの分析を面白く拝読しました。こう書かれると、作者は本当にこの注意書きを見たうえで作品を作られたのではないか、と思ってしまいます。つまり、説得力のある解説です。
ユーモラスな作品であることは間違いありません。それに、きわめて目を引く一首です。韻律とか難しいことを抜きで味わっていいのかな、と思います。
結句、一字空けと「とトイレに」という言いさしがぶっきらぼうさを醸し出して効果的です。
Posted by 村田馨 at 2010年10月26日 19:06
確かにこういう貼り紙を見かけたことがあります。そこで「よそのトイレの紙まで持って帰る人がいるんだ」と、見た人は発見するわけです。場合によれば、じゃあ自分も持って帰ろうと思う輩もいるかも知れません。

逆に「いつも綺麗に使ってくださってありがとうございます」という貼り紙も見かけます。
これも妙な気分にさせられます。
ほかの人はみんな綺麗に使っているのだから、あなたも汚したら、自分で綺麗にしておいてね、というプレッシャーをかけているわけですね。

それにしても、短歌としては、韻律が整っていなくて読みにくいと思います。
アイデアで勝負するような歌は、単純に定型に納めないと、本当に散文になってしまいます。
Posted by 近藤かすみ at 2010年10月28日 18:45
最近トイレットペーパーを持ち帰る方がいらつしやるやうですがやめて下さい とトイレに

前評者と同じく、私もこれではほとんど散文である、と思います。
元のコピーがうまく定型に納まるなら読んだ通りでいいと思いますが、
そうでなければ、内容をきちんと定型に納めないと
こういったうたの良さは出ないのではないでしょうか。

「トイレットペーパーを持ち帰るのはやめて下さい」と納めて、あと
七音にそれの書かれた紙の説明、または貼り方、トイレの情況等々を
置くのが常道ではないでしょうか。

が、こういった貼り紙はときどき見ますので、最後の七音が
よほどユニークでないと新鮮なうたにはならないのではないか
という気もします。
Posted by 花鳥 佰(かとりもも) at 2010年10月28日 23:17
最初の欄ですのでお借りしますが、
この辺までで、まだコメントのついていない詠草についてコメントを試みてみたい、そう思ったときに分る術がないのが残念です。

ひとつひとつ歌をクリックして確認していく作業は、煩瑣で時間的に無理ですが。
技術的に可能なことがあれば善処を期待いたします。

貴重なコメント欄に失礼いたしました。
Posted by 長谷川知哲 at 2010年10月30日 10:43
長谷川さんへ
若干お節介かなと思いつつ、申し上げます。

「まだコメントのついていない」まっさらな、あるいは、言っては悪いですが寂しい詠草について、コメントを試みてみたいというお気持ちは、よく分かります。

全作品のまとめのスレッド(板)、それは今回の場合ですと、10月22日付の「●コメント受付開始」というエントリー(記事)にまとめられた各作品表示の、それぞれの最下段の行(「posted by 短歌人会」で始まる行)に「Comment(7)」などの表示があり、このカッコ内の数字が、それまでのコメントの数のカウンターになっております。

これが「(0)」であれば、まだコメントの付いていない詠草ですが、30日現在、すでに全作品に少なくとも1つ以上のコメントが付いている模様です。
Posted by 坂本野原 at 2010年10月30日 15:47
生沼さん、村田さんへ

日頃、陰ながら尊敬している長谷川知哲さんのお尋ねの意味が、最初ちょっとよく分からなかったのですが、こういうことでたぶんいいんでしょうね?

インターネットやブログの仕組みに慣れていらっしゃらない方には、確かに細かい表示が分かりづらいかも知れませんね。

なお、お手数をかけましてまことに恐縮ですが、少々書き直しましたので、前々回のコメント、およびこのコメントは削除していただきますようお願いいたします。
・・・すみません。
Posted by 坂本野原 at 2010年10月30日 15:55
 いくぶん前評者の方々と重なるのですけれど
「いらつしやるやうですが」の引用部分ながら旧仮名遣いが気になりましたが、引用元が旧仮名遣いであったろうな、と判断しました。もしかしたらこの旧仮名遣いも含めて作者の方はおもしろさを感じたのかもしれない。

「とトイレに」は不必要なのではないかと思いました。引用のものそのまま出しで面白いと思ったので。ただ「とトイレに」は作者の方の口調のようなものを感じました。

最近トイレット/ペーパーを持ち帰る/方がいらつしやるやうですが/やめて下さい/ とトイレに
というように分解して読みました。多少のとまどいはあるものの、わたしはそれなりにリズムをともなって読み下せました。
音の全体量的には多いものの、短歌の範囲におさまる量なのではないかと思います。
また、一句、二句、三句それぞれの後ろの部分が「トイレット」「持ち帰る」「やうですが」と五音で終わっていて、すべて字余りであることが、上の句がどうにかリズムを持って読めることにつながっていると思います。
四句「やめて下さい」は唯一の定型部分で、一首を安定させる役に立っていると思います。
五句「 とトイレに」は激しい欠音。一字空け部分が一音を担っていて五音だと思いました。欠けた部分の二音は、やはり一字空け部分が思考の滞留時間として担っていると思いました。また「とトイレに」は、言いさしではありますが、言いさしのまま止まる呟き、として意識されるものだと思うので、言いさしながら止まる感が強いのだと思います。
Posted by 來宮有人(きのみやあると) at 2010年11月01日 11:33
歌会幹事の生沼です。
ご返事および対応が遅くなりまして、申し訳ありません。

長谷川さん、ご指摘ありがとうございます。また坂本さんも先にお答え下さり、助かりました。御礼申し上げます。

坂本さんのおっしゃる通り、10月22日の「コメント受付開始」の下に各作品の個別スレッドが立ててあります。そこを順番に見て戴きますと、コメント数がクリックなしで確認できますので、お手数ですが今後はスクロールをして下の方をご確認戴けたらと存じます。

なお先程、ブログ最上部の「短歌人ネット歌会のお知らせ」という記事のコメント欄にコメントを書き込めるように致しました。今後、ご意見ご要望はこちらに直接お書きになるか、メールで幹事までご連絡下さい。

お手数をおかけしましたことおよびご連絡が遅れましたことをお詫び申し上げます。

なお前述のコメント欄に、この件に関する長谷川さんと坂本さんの書き込みを転記しました。後日、この記事を含めてこの欄の関連コメントは削除させて戴きます。何卒よろしくお願い申し上げます。

Posted by 歌会幹事(生沼義朗) at 2010年11月01日 12:20
最近トイレットペーパーを持ち帰る方がいらつしやるやうですがやめて下さい とトイレに


この歌が今回のネット歌会の一首目にあったことは、歌の内容とも重なり、大変に印象的でした。しかし今日までコメントを差し控えていたのは、この歌を解釈しきれないことによるものでした。先にあげられておられる解釈を読ませていただき、漸く自分なりの読みに行き着くことができきました。本来、この種の掲示は一部の「いつもきれいに使っていただきありがとうございます」的な言い回しは別として、伝えたい内容を率直に表現するものが多いようです。例えば「節電にご協力を」「一歩前へ」「家庭のゴミ持ち込み禁止」など。このように表現すると、この歌にある掲示は「トイレットペーパー持ち出し禁止」少し丁寧に表現しても「トイレットペーパーを持ち帰らないでください」となるでしょう。

ー続くー
Posted by 村上 喬 at 2010年11月16日 17:20
ー続きー

ところがこの掲示には、『どうも最近、トイレットペーパーの消耗が激しい。もしかすると誰かが持ち帰っはいないだろうか』という推量がそのままに表現され、しかも文体は文語調で「下さい」とお願いする丁寧さ。その可笑しみと共に書き手の人柄まで伝わって来るようです。
ほのぼのとした情景が浮かんで来ました。以上の解釈から「とトイレに」は作者の立ち位置を明確にする上で必要だと思います。
長文にて失礼いたしました。
Posted by 村上 喬 at 2010年11月16日 17:22