何本も赤えんぴつの線のある本だからこそ「斜陽」を買った
【選歌集計結果=9票】
【投票者=肥塚しゅう/保里正子/加藤隆枝/伊藤阡/生沼義朗/国東杏蜜/西橋美保/真中北辰/太田青磁】
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歌全体に強いちからが感じられる一首だからです。
中古書店で「斜陽」を手に取ってみたところ、赤線が何本も引かれていた(書き込みもあったかもしれない)。作者(作中主体)がその赤線に「だからこそ…買った」という強い意志を感じた理由は何だったのか? 「人間失格」ではなく何故「斜陽」だったのか?
我々鑑賞者は想像することしかできませんが、この一首は、「何本もの赤えんぴつの線」「だからこそ買った」との強い意志と、太宰の「斜陽」との取り合わせが、絶妙にフィットしていると私には感じられました。
「だからこそ買った」ということは前の持ち主のその読みごと、読書体験ごと買う、というような意味だなと思い、いいと思いました。
本の著者とだけでなく、
自分より前の読者とも語り合う、濃密な時間を買ったのですね。
「だからこそ」から強い意志と意欲が伝わってきます。
ここからは恣意的な読みかもしれませんが…
一読して、イメージがくっきり浮かびました。
やわらかな赤えんぴつの線は
夕刻差し込む光線のようであったかもしれません。
波線ではなく直線、それも、定規を当てず手で引いた、
やや斜めに傾いだ線であったかもしれません。
『斜陽』という書名が(意図的か偶然かは分かりませんが)
実によく効いていると思います。
国東さんもおっしゃっておられる通り、マーカーでもボールペンでもない「赤えんぴつ」という道具立ても効いています。
細かいことのようですが、表記の約束事として、単行本の書籍を表す場合は『』(二重鉤括弧)になります。「」(鉤括弧)は雑誌や単行本に掲載された作品を表します。この歌は書籍を意味していますから、二重鉤括弧の方が誤解を招かないでしょう。
ブックオフなどで、たまにラインを引いた本や書き込みがある本を見つけると、思わず買ってしまいます。自分では絶対にラインを引かないようなところにラインが引かれているので興味深いです。
蔵書印が押してある本も好きです。たまにプリクラや写真が栞がわりに挟んであることもあって、そういうのも好きです。
ありがとうございました。