詠草に柴犬で封 世界にはつやっと濡れた鼻が足りない
【選歌集計結果=3票】
【投票者=生沼義朗/川上幸子/野崎挽生】
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詠草を送る封筒に柴犬のシールで封をした、そのような景と読みました。
柴犬の「つやっと濡れた鼻」にフォーカスしている点に惹かれました。柴犬に抱いていた<かわいい>という漠然とした感情の正体を読み手に掴ませる説得力があります。
世界という大きな主語を「詠草」「柴犬」「濡れた鼻」という具体によって身近に引き寄せています。結語の言い切りの形も効いていて、本当に足りないもののように思えてきました。柴犬の鼻は、万国共通の平和のシンボルですね。
野崎さんのコメントを拝読して、あ、そうだったの!と驚きました。
詠草を入れた封筒の糊づけに飼い犬の鼻を使ったのかしらん、水分が足りないでしょうね、
などと思っていました。
コロナ禍もあって、切手を舐めることは勧められなくなりましたが、
唾液のような生物体の粘液が、じつは切手を貼るのには最適なんだとか。
むかし柴犬を飼っていたので「つやっと濡れた鼻」がリアルに蘇ってきました。
私には読み切れないものの、ちょっと不思議な、シュールな読後感が魅力です。
身近に犬のいる生活を送っている方ならではの作法ですね。とても微笑ましい景が浮かんできました。
川上さんの読みは私には多少無理筋に思えますが、これはこれで成立はしうるでしょう。どちらにしても重要なのは三句以下の「世界にはつやっと濡れた鼻が足りない」で、ここに作者の欠乏感というか「世界」に対する希求が出ているところに好感を持ちました。