2023年02月09日

第50回ネット歌会詠草/12

雪の朝かじる王林 白秋の林檎の香りたしかめるべく


【選歌集計結果=4票】
【投票者=太田青磁/加藤隆枝/川上幸子/楠 歌恋】


posted by 短歌人会 at 00:14| Comment(4) | TrackBack(0) | 第50回歌会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
白秋のあの有名な1首を検証するように林檎をかじる、というのが面白いと思いました。それも王林を。言葉にしただけで甘い独特な香りが漂ってきそうな「王林」はぴったりです。字面も響きもここは「王林」以外の品種は考えられない気がします。
Posted by 加藤隆枝 at 2023年02月18日 11:29
加藤様のおっしゃるとおり、白秋の「君かへす…」の歌を思い浮かべました。白秋が道ならぬ恋に堕ち、雪の降る朝に恋人を帰す、切なくてでも少し甘い気持ちを詠った好きな歌です。この歌はそれを下敷きにしていますが、雪が降ってしんと静かな朝に王林をかじる音が聞こえるような雰囲気のある歌だと思いました。
Posted by 大野奈美江 at 2023年02月18日 11:59
雪の朝かじる王林 白秋の林檎の香りたしかめるべく

数年前、宮澤賢治のリンゴの短歌(大正3年)について少し調べたことがあります。「夏りんご」を「青りんご」とする例をネット上で見つけ、気になったのです。正しくは「青りんご」のようです。

ちなみに、『銀河鉄道の夜』に出てくる「苹果」は大粒の西洋リンゴで、西洋リンゴ輸入前の小粒の和リンゴは「林檎」と表記されていたそうです。

白秋の「林檎」の一首は『桐の花』(大正2年)所収です。漢字から小粒の和リンゴでしょうか?でも、リケダンの賢治ならともかく、白秋がこうした漢字の使い分けを意識していたとは限りません。

ハイカラ趣味の白秋、しかも背景には只ならぬ恋があるわけですから、ここは、当時まだ珍しかった西洋リンゴを指すと思われます。(西洋リンゴの生産が安定するのは大正の終り頃からです)ただ、「王林」は昭和初年から品種改良され、同27年に命名されたそうですから、残念ながら白秋の林檎ではありません。

それでも、王林の香りや音の響きは白秋の歌によく合います。「林檎」と「林」の一文字を共有していることも見逃せません。説得力のある、すてきなイメージだと思います。後世の歌人による自由な発想と鑑賞を、白秋も喜ぶだろうと思います。

私自身は、明治の初めに輸入され、栽培が始まった紅玉をイメージします。一首の歌空間のなかで、雪の白と林檎の赤が響き合うのを愛でたいのです。また、禁断の恋には原罪を思わせる赤い林檎が似合うのではないでしょうか。

白秋の林檎の一首には、高校時代に出会いました。爽やかな香り、さくさくという食感と足音…五感に訴える一首の魅力を、王林のお歌と一緒にかみしめられて、嬉しいです。

Posted by 川上幸子 at 2023年02月24日 12:44
選歌、コメントいただきましてありがとうございました。

白秋の林檎は、真っ赤な林檎を想像させますが、私はあえて紅い林檎を選びませんでした。色からではなく、雪の香りに注目しました。
Posted by 馬淵のり子 at 2023年03月06日 10:29
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